「通天閣」


「通天閣」舞台写真

原作/西加奈子 脚色/おおやかづき

原作「通天閣」(織田作之助賞受賞作)は、庶民の街新世界を背景に、笑いあり、涙あり、切なくとも、ホットでほかほか、心あたたかい西加奈子氏の本音いっぱいの作品です。燦々と降り注ぐ光を浴びたくとも、そんな望みは持ちようもなく、行き場のない人々がたむろする通天閣のある街“新世界”・・・・・・この街に暮らす人々に光を当て、「どっこい、それでも生きているんだよ!!!」と、辛くとも悲しくとも逞しく生きる人間の姿を描き出しています。まるで、通天閣が毎夜照らす灯りのように、あたたかい眼差しで人々を見つめ、その営みに惜しみのない祝福のエールを送るかのごとくです。

 

「通天閣」に描かれた世界は、新世界に限ったことではありません。それぞれがそれぞれを思いやり支え合うことのできない今の世の中、心荒んだ世界中のあちこちにあるシーンです。誰しも、光を浴びて生きたいものです。それは私たち共通の願いに違いありません。蔑まれても見下されても、裸の心を剥き出しに生きる姿を通して、求め合う愛や、愛による救いや希望を、力及ばずとも、生の舞台で、生の迫力で、迫ってみたいと存じます。



ストーリー

通天閣そびえる新世界を舞台に、主人公男女二人を中心に心厚く描く人間模様。一人は、若かかりし頃に子持ち女性と結婚するが別れ、今は頑なに世間との関わりを最小限に暮らす中年男。女性への愛を貫けなかったことだけでなく、幼い連れ子に対し何の優しさも愛情も示せなかった思いが心の傷となっている。

もう一人は、ミナミのぼったくりバーにチーフとして勤める若い女性。同棲していた彼の帰りを待ち続けていたが振られ、泣き暮す日々。男女ともに愛を求めつつも報われず、生きる希望を見失っている。 男が勤める工場にドモリの新入りが入社。中年男は、何故かこの臨月の嫁がいる新入りに心を許 し始め、新たな生命の誕生に頑なな心が溶け始める。

ぼったくりバーのバカ騒ぎの中で、女はただただ空しさに襲われ、泣き明かした挙げ句、店を辞めたいとママに告げる。ママは女を通天閣に誘い、大阪の街を見下ろしながら、自らの体験を語り励ます。女はふと、次から次に男を替えてきた母親が、子供の前では決して涙を見せなかったことを思い出す。

そんな折に起こった通天閣からの身投げ騒ぎ。野次馬たちが騒ぐ中、交差する男女二人の想いは、ちらつきはじめた雪に浄化され、浮かび上がる通天閣の姿に生きる希望を見出す。




チラシ ・ パンフレット

2018/09/06「通天閣」チラシ表
2018/09/06「通天閣」チラシ表
2018/09/06「通天閣」チラシ裏
2018/09/06「通天閣」チラシ裏


上演履歴

2018/09/06 兵庫県立芸術文化センター 写真集